内弟子だけに指導される奥義などの高級技法の数々。



●内弟子修行をする為の費用

 費用面と修業年数は次の通りである。
 費用は以下の通りであり、修業年数は2年である。
 入門に際して入門金50万円。月謝は食費やその他を含めて10万円。


募 集 対 象 ・ 稽 古 日 / 入 門 費 用
16歳以上の義務教育を終了した
 健康な男女で、成人に関し、上限の年齢制限なし。
入門金
月 謝
500,000円
(入門契約後に支払うものとする)
100,000円
(月謝は毎月月初め5日迄に支払うものとする)
入門に必要な書類
1.住民票(家族全員のもの)
2.入門審査提出願書。
3.身元保証人一名。
4.未成年の場合は保護者の承諾書。
・道場設備費並びに内弟子満期終了時の拝領刀に充てられる。 ・宿泊費用並びに生活食糧費に充てられる。


 実際に入門を許され、最初に60万円が必要であり、その資金が、もし諸氏の、生涯を通じての、それを消化して、自分自身の所有になり、自分を護る最大の「切り札」となると考えてた場合、ここには金や物以上に大きな価値観を見い出す筈である。

 よく曽川宗家は、「稽古事」に金銭を払う事に躊躇する人に対し、「あなたの命の値段は如何程ですか?」と訊く。こう問われて、多くの人はギクッとする。多くが、自分の命の値段を知らないからだ。自分の命を護る最大の「切り札」に、躊躇した心の裡側(うちがわ)を見透かされるからだ。

 自分の命を軽々しく考えている人は、物質優先の生活を送る人が実に多い。自分を粗末に扱っている人が多い。だから稽古事に、何でそんなに高額な金銭を払うのかと……金を惜しむ。

 しかし、これが一生涯を通じて、自分のものになり、それを会得できれば、この入門時に払う60万円は、そんなに高くない金額である。

 その上、内弟子修行満期終了時には、曽川宗家から、高価な拝領刀を賜わり、これは一生涯の自分自身を護る強い味方になるのである。

 この拝領刀は、既にこれだけで、日本刀剣保存協会の「保存刀剣クラス」の日本刀であり、これだけでも刀剣店で買えば、軽く70万円はする代物である。
 これを曽川宗家から、内弟子修行満期終了祝いとしてプレゼントされるのである。商売人的な考え方をすれば、日本刀を拝領を賜わった時点で、物質的な換算をして、入門金の50万円の「元を取っている」ことになる。



現宗家・曽川和翁先生の御信刀・津田越前守助廣。
 
【註】草書銘を切るを「丸津田」という。

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表銘(津田越前守助廣)

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裏銘(延宝二年八月日)

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津田越前守助廣の武蔵拵

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 曽川宗家は、また日本刀の鑑定士でもあり、刀の目利きは相当なものである。その目利きによって、「あなたは、この刀を生涯の護身刀としなさい」と満期終了数日前に申し渡されるのである。この時が終了間際の一番華やかな時期であろう。

 内弟子修行満期終了時、とにかく70万円相当の日本刀の拝領を受けるのである。
 商業的な損得勘定で計算し、金銭的な言い方をすれば、この時点で元をとったということになる。
 入門時には入門金と第一回目の月謝を合わせて60万円の支払いをするが、その金額が高いか安いか、それはその人の受ける人間性と価値観によるものである。

 またデフレ不景気(正確にはハイパーインフレ構造と言うそうだが)の物価高の世の中、一ヵ月の一切が10万円という月謝で、本当ならば果たしてどれだけの事が出来るか、考えてみれば分かると思う。こうした費用面を計算すれば。この中には家賃、水道光熱費、食費、技術指導料、学科指導料、その他の一切が含まれる。果たして、一人の学徒が10万円と言う金額で、このご時世、就学が可能だろうか。

 一番分かりやすい例を挙げれば、県立高校に通っている高校生を考えてみればいい。彼等は果たして学校の授業料や食費やその他の経費を合わせて、10万円以内でおさまっているであろうか。当然この中には、家賃あるいは固定資産税の分担負担金も入る。これを全て合計すれば、10万円は越える筈である。

 尚道館の内弟子クラスの毎月の月謝が10万円と言うのは、決して高い事はないはずであるし、むしろ良心的である事は明白である。

 一言で金の遣い方と言うものはいろいろある。そして「生き金」と「死に金」というものがある。
 幾つになっても青雲の志に燃えて「生き金」を遣えばそれは一生の宝になるし、物や色に固執して一時の享楽に興じれば、それは「死に金」となるだろう。
 尚道館の内弟子の修行に遣われる金は、まさに「生き金」であり、つまり尚道館では、内弟子に対し、金で買えないものを伝授するのである。
 この制度を尚道館では「内弟子制度」というのである。