秋の七草の種類と効用
 秋の七草には、萩(はぎ)・尾花(おばな)・葛(くず)・撫子(なでしこ/瞿麦)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・朝顔(アサガオは牽牛花とも書き、朝顔は今の桔梗(キキョウ)を言う説とムクゲなどを指す諸説がある)の七種類があります。

 秋の七草は『万葉集』にも挙げられ、山上憶良は、
  秋の野(ぬ)に咲きたる花を指折りてかき数ふれば七草の花
 と詠んだ歌があります。
 七草の花は萩の花、尾花、葛花、撫子の花、女郎花、藤袴、朝顔の花の七種です。

1.萩(はぎ)……マメ科ハギ属の小低木の総称で、高さ約1.5cmに達し、叢生します。枝は垂れるものはが多く、葉は複葉です。夏から秋に紅紫色または白色の蝶形花を多数総状につけ、のち莢(さや)を結びます。一般には観賞用として用いますが、家畜の飼料等にも使われ、普通にはヤマハギ・ミヤギノハギを指します。腎臓病と胃腸病に効果があります。

2.尾花(おばな)……一般にはススキの花穂を指し、これが花が尾に似ているので尾花とも言います。
 また、食養としては、「尾花粥」があり、宮中では8月の朔日(さくび)に、疫病を除くために用いて粥にします。この粥にする場合は、ススキの穂を黒焼きにして粥に混ぜます。江戸時代には早稲(わせ)の穂を黒焼きにして黒胡麻を混ぜて用いました。肝臓病に効果があります。

3.葛(くず)……マメ科の大形蔓性の多年草で、山野に多く、蔓の長さは約10m以上にも達します。葉は大きく、裏面は白っぽい色をしています。秋に葉腋に花穂をつけ、紫紅色の蝶形花を総状に咲かせ、花後、平たい莢(さや)を生じさせます。根は肥大し、生薬の葛根(かつこん)として解熱薬に用い、また、葛粉を採ります。蔓の繊維をとって葛布(くずふ)を織り、また蔓で行李などを作ります。この名前の由来は、奈良県国栖(くず)の地名に因むという言い伝えもあります。胃腸病に効果があります。

4.撫子(なでしこ)……ナデシコ科の一群の草本の総称で、自生種ですが、最近では園芸品種も多く出回っています。
 撫子は一種の多年草で、日当りのよい草地・川原などに自生します。高さは数10cm程で、葉は線形になっています。八〜九月頃、淡紅色の花を咲かせます。花弁は五枚で上端が深く細裂し、種子は黒色で小さく、薬用効果としては利尿に有効です。

5.女郎花(おみなえし)……オミナエシ科の多年草で、高さは約1mくらいです。山野に自生し、夏・秋に黄色の小花を多数傘状につけます。漢方では根を乾して、利尿剤にします。

6.藤袴(ふじばかま)……キク科の多年草で、やや湿気のある所に自生します。高さは約1mほどで、全体に佳香があります。秋には淡紫色の小さな頭花を咲かせ、多数散房状に花を開かせます。整腸剤として使われます。

7.桔梗(ききょう)……キキョウ科の多年草で、夏・秋の頃に、茎の先端に青紫色、または白色の美しい五裂の鐘形花を咲かせます。
 また桔梗と言う漢名は、『神農本草経』(五〇二〜五五七年に編纂)にはじめて紹介されており、山地・丘陵・草原に自生し、根は牛蒡(ごぼう)状で太く、乾して生薬の桔梗根とし、気管支炎、偏桃腺炎、肺病、解熱に効果があり、去痰(たんをとる)・鎮咳薬などに用いられます。
戻る次へ