食体系の破壊が、
今日の日本人を骨抜きにしてしまった現実
 日本人は玄米穀物菜食主義を基軸に、伝統的な食文化を全うしてきた民族です。
 しかし江戸時代に入ると、オランダの西洋文化が流れ込み、豪商の間の食生活の中に西洋の食肉文化が徐々に浸透していくことになります。

 そして明治維新以降は欧米一辺倒になり、肉食は好んで食べられるようになって、スキ焼きや牛鍋や焼き肉などが、広く紹介されるようになり、栄養学者達は食肉をすると健康によく、体力が増強されて、エネルギー源になり、体格も西洋人なみの体躯が作れると豪語しました。それが今日まで盲信的に信じられ、庶民の間にもこうした神話が安易に信じられるようになりました。

 しかしこうした肉食万能主義は、戦後のことであり、主に都会に於て信じられた妄想であり、これが日本全国の津々浦々にまで浸透したのは、昨今よりほんの数十年前のことに過ぎません。
 韓国においても、古来よりの焼き肉の本場の国のように宣伝されていますが、これも昨今のことで、こうした食肉思想に拍車が掛かったのは1980年代以降のことです。

 日本の敗戦の原因は、工業生産力と体躯・体格の差に求められ、欧米型生活のスタイルこそが進歩的と、盲信的な思考が大半を占めると、これまでの日本の生活様式は古くさくて迷信に満ちているという、時代遅れを指摘した考えが一般的になり、欧米のものは何でも優れているという、間違った思考が上から下まで支配するようになりました。
 この支配的な盲信が、今日の現代栄養学を作り上げたのです。

 また現代栄養学に基づく理論として、「食事バランス」が表面化すると、医学者や有識者が先頭に立って、その特殊特権の権威を以て、一般庶民にアピールを行い、これが栄養学の基準として定着し始めたのが1950年代頃で、アメリカ公衆栄養学こそが栄養学理論の基本と定められました。
 それは大別して四つの食品グループから構成されています。

 その第一は牛乳を始めとする乳製品であり、第二が肉や卵で、付随する物としてマグロなどの高級魚が上げられ、第三に漂白小麦粉を中心にする白パン、そして第四が野菜(もともと日本になかった西洋野菜)や果物(主にアメリカの甘橘類)です。
 この食事法の指針は終戦直後、マッカーサーの訪日とともに、進駐軍(占領軍)の政治的政策の一環として推進され、この背後には当然の如く、日本市場にアメリカの食物業界が参入しようとする思惑が働いていました。

 こうして日本人は現代栄養学という政治的な意図を持った食糧政策に騙され、また、医学者や栄養学者の権威の威光によって、一般庶民層はこうした思考を鵜呑みにする現実が生まれました。かくして、日本人の胃袋は、見事にアメリカ食品企業の主導型食糧政策によって支配され、占領されて、今日、多くの家庭の食卓にはアメリカの星条旗が処狭しと並ぶ現実を作り出しました。

 現代栄養学が、権威として体系づけた理論の主軸である、肉・卵・牛乳などの動物性蛋白質の奨励は、健康維持のためというのは真っ赤なウソであり、この背後にはアメリカの飼料穀物企業の周到な、利潤追求のための食料戦略があり、政治的には、つまり、家畜飼料の市場を一手に握り、「動物性蛋白質は人間にとって絶対に必要な食品」と煽り、経済的には市場を独占するという計画が背後に潜んでいました。
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