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米を食べる国・日本
玄米正食


●日本人の食性は玄米穀物菜食である

 そもそも食物の成分には、有機質と無機質があって、有機質の方は先人が苦労して研究を重ねた末に発見した物ですが、無機質に対しては、殆ど見過ごして来た物質です。また、食物の中に含まれる有機質を研究した学者は、殆ど居ませんでした。
 しかし、その中でも食養道を提唱した石塚左玄(明治色に陸軍薬剤監)は、無機質を研究した数少ない学者の一人でした。

 石塚左玄は無機質を調べ、「夫婦アルカリ論」を展開して、食物の中には無機質が存在し、その中でもカリウムとナトリウムに注目し、双方のバランスが大事であると提唱したのです。更に、このバランスを考えた上で、玄米はカリ塩とナトロン塩が非常にバランスの取れた食品であることを発見しました。

 石塚左玄の説いた「夫婦アルカリ論」とは、食物の化学成分の中には、無機塩類としてのミネラルが存在し、こうした物の中で、カリウムとナトリウムに注目し、これが夫婦の陰陽で、「一組」を考えたのでした。そして、植物の性質を決定付けているのが、カリ塩とナトロン塩であるとしたのです。

 植物のミネラルの中には、マグネシウムやカルシウムなど、数多く存在し、特に石塚左玄はその代表格の、カリウムとナトリウムに注目したのです。

大豆
里芋

 カリ塩の多い食品に、例えば大豆とか里芋(さといも)を挙げ、こうした食品は煮ると非常に軟らかくなって、大きくなる。一方、ナトロン塩の多い食品を挙げ、例えば獣肉や卵のような食品は煮ると非常に硬くなり、小さくなる性質を持っています。
 したがって、料理には、軟らかくなって伸びて膨らむ物と、硬くなり縮む物とを適度に配合しなければならないとしたのです。

 
日  本(海 国)
ヨーロッパ(大陸国)
気候風土
温暖多湿。四季がはっきりと分れ、寒暖の差が緯度の高くなるにつれて甚だしくなる。列島国・日本はその典型。 陸地の影響を強く受けた気候で、大陸内部に見られ、雨量が少なく、昼夜の気温差、乾燥し、涼冷で、夏と冬との気温差が大きい。
体  質
潮風に当たり続けた海国人種で、体質的にはナトロン塩が多くカリ塩が少ない。 寒冷の涼風に当たり続けた大陸人種で、体質的にはナトロン塩が少なく、カリ塩が多い。
食 理 想
ナトロン塩を少なくし、カリ塩を多くする。 ナトロン塩を多くし、カリ塩を少なくする。
食の誤り
ヨーロッパやアメリカから持ち込まれた明治維新以降の日本人の食生活は、ナトロン塩が多い食事をとった為、難病・奇病が多発。 牛・豚・鶏肉などのナトロン塩過多の食品を、日本人に栄養学として押し付けた。
結  果
肉が多くなり、野菜が少なくなって、玄米穀物の代わりに、パン食をするようになった。 欧米食持つメジャーの、牛肉などの、日本を含む、東洋向けの食肉の需要が激増した。

 健康造りに塩分(ナトリウム分)は必要不可欠なものです。また、「健康」とは、血液中のナトリウムイオンと、細胞内のカリウムイオンのバランスが採れて、はじめて全身の細胞や組織の機能は順調に営まれるものです。

 そもそも生命は、海から発生したもので、海水に浸されて生きるという基本条件があります。それは生命が進化しても、その基本条件は変わることがありません。したがって、人間は塩分と無縁な存在ではないのです。石塚左玄の提唱は、生命の本質に基づいたものだったのです。

 また、石塚左玄は人間の歯の構造に注目し、人間の歯の構造こそ、人類が穀物菜食をする生き物であることを発見したのでした。人間の持つ歯型こそ、食性の証明に他なりません。
 人間の歯のうちで一番多いのは、「臼歯(きゅうし)」です。人間では上下とも左右に前臼歯2枚、後臼歯3枚ずつあります。臼歯はまさしく「穀歯」です。穀物類をすり潰し、砕くのに適した歯です。

 次に多いのが、門歯であり、門歯は「菜歯」ともいいます。門歯は上下の顎の前方中央部に生える左右各2枚の歯で、口腔の門戸に当るので、「門歯」と名付けられています。
 この歯の構造だけで、人類は何を食べたら、自然が教えてくれているのです。つまり人類は、穀物菜食の食性を持った水冷式哺乳動物なのです。

 諺(ことわざ)に「物が釣り合いを失えば音を立てる」というのがありますが、石塚左玄は『化学的食養長寿論』の中に、これをもじって「食が釣り合いを失えば病気になる」と論じています。
 それだけ、人類にとって「食」とは、人間の成長を育み、生命を保つ上で、非常に大切なものであると云うことが分かります。則(すなわ)ち、「食」こそ、「人間の化身」なのです。

 食養を行うには、その民族が棲(す)んでいる位置や地形、気候や風土に大きな関係があります。特に地理的な位置と気候の寒暖の差は、その地域の人の食性を決める上で重要な要素となります。
 「郷に入りては、郷に従え」という諺がある通り、食養を実行するには、その地域性と気候が、その国の国民の食性を顕わします。

 また、以上の事から考えれば、日本のような海国に棲んでいれば、環境的にも体質的にも、もともとナトロン塩が多いのに、ヨーロッパやアメリカのように、カリ塩の多い国の人種の真似をして、際限なく肉を常食すると、ナトロン塩摂取過剰になります。
 しかし、現代栄養学は獣肉の持つアミノ酸ばかりに注目して、肉食を奨励しています。
 では、動蛋白食品が腸内で腐敗し、血液を汚染させる元凶であると知りつつも、何故、こうまでに肉常食を奨励するのでしょうか。

 それは肉の組成が高蛋白であり、良質のアミノ酸が存在していることから、食肉礼賛をし続けているのです。また、「肉はスタミナの元」というウソを日本国民に植え付け、食肉を動蛋白信仰の神話として、その頂点に祭り上げたのです。

 しかし、果たして本当に現代栄養学が云うように、「肉はスタミナの元」なのでしょうか。
 スタミナが付く条件は、まず血液がサラサラ状態でなければなりません。しかし、肉を常食して、血液はサラサラ状態を維持できるのでしょうか。
 これは、肉を食べた跡(あと)の皿の脂汚れを視(み)ても分かることです。更に、頑固に付着した脂汚れは、水だけで洗い流せるものでしょうか。これは誰が検(み)ても、無理であることが分かります。

 こうした皿や食器を洗うのには、強力な台所洗剤が必要になります。洗剤なしに、食器のしつこい脂汚れを洗い落とす事は出来ません。洗った跡の脂汚れは、台所の排水口から下水道を通って、一端は浄水場で浄化されて海に流されますが、これで完全に浄化されたわけではありません。

 つまり、私たちの食べている動蛋白食品の汚れた脂は、台所洗剤の有害物質と共に、海に流されているのです。
 しかし、現代栄養学の食指針は、肉を奨励している為に、一般の日本人の頭から、「肉はスタミナの元」のウソが頭から離れません。これは日本人の間で、今なお、食肉の需要が減っていないことからも分かります。

 では何故こうまでに、「スタミナの元」と信じて疑わないのでしょうか。
 多くの日本国民の間には、頭の片隅に「肉は酸性食品であるのでよくない」あるいは「肉食はコレステロールを増やすのでとくない」という考えが、微(かす)かながらにあります。しかし、「肉はスタミナの元」という考え方が勝(まさ)っている為、「多少マイナス面があるにしろ、スタミナをつける方が先決である」という考え方をしてしまいます。

 しかし、これこそ全く矛盾した考えではないでしょうか。
 何故ならば、人体の生理機能の秩序というのは、全く矛盾なく働いているからです。肉を食べて血液を酸毒化しておき、その上にドロドロ状態で、コレステロールを増大させておいて、動脈硬化を引き起こす一方で、どうして「スタミナがつく」という好現象が期待できるのでしょうか。

 医学的に考えてみて、「スタミナが付く条件」とは、まず、血液が弱アルカリ性(生理的中性)で、動脈がしなやかな状態に保たれている時に、「スタミナアップ」が図られるのであって、血液が酸毒化してドロドロで、動脈が硬化した状態では、絶対にスタミナなど、つくはずがないのです。

 本人は、肉をスタミナ食と思って、ボリボリ貪って食肉を喰らっていても、実は躰(からだ)の方が悲鳴を挙げているのです。これこそが、大半の日本人の肉に関する実情ではないのでしょうか。
 その結果、頭が重い、頭痛がする、イライラして怒りっぽい、短気で直ぐに切れるなどは、総(すべ)て肉常食の悪影響から起っているものです。

 こうした悪現象は、ナトロン塩摂取過剰に問題があるのです。
 もともと日本のような海国に棲んでいれば、環境的にも、気候風土的にも、ナトロン塩が多いのに、ヨーロッパ大陸や北アメリカ大陸のような、カリ塩の多い国の人の真似をして、限度なしに食肉を食べ、穀物や野菜の量を減らした食事をすれば、ナトロン塩摂取過剰になるのは当然の事です。

 ナトロン塩の性質は、組織が縮まり、硬くなる作用があるので、その作用を抑制するのにカリ塩が必要ですが、穀物菜食をせずにカリ塩摂取のチャンスを逸しているのです。その為に、発育上、健康上、食養のバランスが失われ、特に戦後生まれの日本人を検て視ますと、乳製品の常食で、一見身長背丈は高く、手・足は長く、顔は小さく、才気に富んだように映りますが、その実、判断力がなく、精神的に脆(もろ)く、脅迫に屈し易く、屈強さに欠けています。

 つまり、社会ダーウィニズムの弱肉強食の論理に押し流されて、精神的には日本精神を崩壊させ、現代にジョン人は「家畜化された」という現実の中に置かれてしまったのです。こうした世論誘導もあって、現代栄養学が食肉や乳製品を、執拗に奨励しているのかも知れません。

 人の人生は様々であり、現代に生きる私たちの現実は、背後にこうした世論誘導があることに気付いて、これにコントロールされる事なく、確立した自己の信念を以て生きることも人生であるますし、あるいは、こうした世論操作など知らずに生きる事も、また、人の人生でありましょう。
 しかし、「知らずに生きる」ことは、結局私たちの未来を失い、また、後世の世代に続く、子孫の未来を失うことに繋(つな)がるのではないでしょうか。



●日本人に不向きの欧米型食生活からの脱出

 「肉と野菜の双方をバランスよく摂る」という考え方は、その根底に「美食主義」の食思想が流れていて、つまり、「コッテリ味の肉」と、「あっさり味の植物性食品」で、双方が中和するという考えがあります。つまり、肉食をする為に、「野菜が必要」とする考え方です。

 しかし、この食思想は昭和55年以降の「現代」に、体系付けられた現代栄養学の食思想であり、「肉と野菜の双方をバランスよく摂る」という思想は、それ以前には存在しなかった考え方です。
 そして「現代」という時代を境にして、現代人に降り懸
(か)かる病気は、動蛋白摂取が盛んになるに比例して急増していきました。

 特に美食主義は、肉に固執することにあります。肉を食べる為に、野菜が必要だと云う考え方の上になり立っているのです。
 しかし、この考え方は、歴史のどの時代を見ても出て来ません。フランス料理は、もともと動蛋白を中心にした考え方の上で調理が進められ、確立した料理でした。

 この料理の特長は、フランスで発達した伝統的な料理である一方、根底に美食主義の食思想が流れている為、国際上の饗宴などに用いられることが多い料理です。その料理技術は、高度な調理法と、多様なソースを用いた、洗練された複雑な味が特長であり、基本的には人間の欲情を誘い、肉を貪
(むさぼ)り食べたいと考えている人を誘い込む魔性を持っています。

 これは古今東西の聖人が、こうした料理を慎んだのとは、まさに対照的です。
 肉料理は、野菜料理よりも塩分の甘味と香ばしい旨味があるので、一般人は貪り喰いたいと言う欲情を常に肉に抱いているのです。
 しかし、釈迦は肉の毒性を指摘し、また、肉の食材になる牛や豚は人間が保護すべき動物と仏典に定めました。孔子ですらも、「肉多しと雖
(いえど)も食気に勝たしめず」と戒めたのです。

 現代日本人は、胚芽食欠乏状態になっています。それに加えて、現代日本人の食の三本柱になっているのは、現代病の元凶である「白米」「食肉」「白砂糖」です。そしてこれらは何れも、人体の生理機能を根底から混乱させ狂わせるものばかりです。
 食の誤りが、過去にはなかった様々な現代病を生み出しているのです。

 その為に、現代栄養学の指針に従って、獣肉・鶏肉・魚肉などの食肉や、吸入・チーズなどの乳製品ばかりを取り続け、白米や白パンを主食にした雑食を摂り続けると、人生の早晩には慢性病に見舞われる結果となり、健康的な長寿は難しいものとなります。

多くの日本人が和食と信じている食事メニューは、和食と信じていても、それは「和食」の名を借りた、紛れもない雑食主義の「欧米食」である。

 食生活と健康に関しての情報は大量に飛び交っていますが、「白米」「食肉」「白砂糖」の問題を正しく処理しない限り、真の健康体は造れないものになります。
 多くの食情報は、ダイエットを中心にした何でも食べよう主義では、それは単に、雑食の間違った栄養学を展開しているに過ぎない事になります。

 白米を主食にし、それに見合う獣肉・鶏肉・魚肉などの食肉食品に、僅かながらの野菜を添えて、これを「和食」と称している食事メニューは、実は本当の精進料理で云う和食ではなく、和食の名を借りた、「西洋食」がその正体なのです。その上に、胚芽が欠乏した欠陥食です。

 白米主食がいけない最大の理由は、白米自体が「胚芽欠乏食」であるからです。
 一方、玄米は胚芽食品であり、胚芽の中には、不飽和脂肪酸・ビタミン・ミネラル・酵素を多く含んでいるからです。未精白穀物は、玄米にしろ、大麦にしろ、体質を「中庸
(ちゅうよう)」に保つ働きがあります。人体を健全に保つ為に「中庸」は非常に大事なことで、中庸とは、生理的な完全バランス状態を云います。

 しかし、白米や白パンには、胚芽がすっかり抜け落ちていて、本来ならば複合的な炭水化物であるはずの玄米や玄麦が、単純的な炭水化物に成り下がり、欠陥食品になってしまっていることです。こうした単純的な炭水化物は代謝機能に必要なミネラルや酵素が抜け落ちている為に、様々な代謝障害を起します。現代人に巣喰う現代病は、実はこうしたところに、現代人が落ち込んで来るのを待ち構えているのです。

 その結果、現代人に多いのが、胃腸障害、便秘、痔疾、肩凝り、腰痛、高血圧、高脂血症、糖尿病、貧血、偏頭痛や後頭痛、アルツハイマー型痴呆症などで、それが軽症の場合でも、思考力や記憶力の低下、自律神経失調症、ノイローゼ、不眠症、基礎体力の低下などが挙げられ、種々の早老現象が襲って来ています。
 そして、精白食性はガンを招き寄せる典型的な食品であり、特にビタミンB群の欠乏は「白米病」そのものであり、脳や神経系に悪影響を与えています。

 また、欧米型の食生活偏重は、単に健康を失墜させるばかりでなく、肝臓病・心臓病・糖尿病などの成人病を始めとして、慢性病を激増させ、慢性病のトップがガン疾患であるのは周知の通りです。