歩かなくなった現代人へのメッセージ

腐敗した心を改め、健全で、健やかな大自然への旅立ち。


医事評論家
(米国イオンド大学教授 哲学博士)

●夜の喧騒に惹かれる誘惑からの脱出

 夜のネオンと喧騒(けんそう)に惹(ひ)かれ、芸妓の嬌声(きょうせい)に調子を合わせ、人間関係で上役のお追従に苦慮し、あるいは美味しい物があると聞けば食道楽を自負して、何処にでも出かけて行って、それに舌鼓を打ち、グルメを気取るような生活は、何処か間違っているのではないでしょうか。
 こうした下界の生活空間こそ、大自然から隔離された世界です。

 もともと人間は大自然の中の住人であり、自然と接する事で爽やかな健康が約束されるのです。人間本来の姿は、太陽と共に起き、太陽と共に寝るのが、最も自然な形として、人の生き方を代表していました。こうした太陽と共にある環境の中で、人は健康が約束されていたのです。

 その証拠に、太陽とすれ違いの生活をする「夜の蝶」と云われるホステスや芸妓たちの顔は、昼間には全く見られたものではありません。こうした魔界の誘惑から解放されて、太陽の白日の許(もと)に、健康で健全な心身を育成しようではありませんか。



●ガン恐怖症からの解脱

 心は、汚染によって穢(けが)されて行きます。こうした穢れを放置しておくと、純粋無垢な心の状態に戻れなくなり、やがて気が病み始めます。
 一般に慢性病と云われる「成人病」の多くは、気から起った病気です。ストレスが積もりに積もり、これが慢性病を発症させるのです。

 ガン発症の一番最初の状態も、病因はストレスです。
 さて、ガン発症をする人は、ある極めて酷似した共通点を見い出すことできます。それは十分に睡眠時間をとり、健康に神経質なくらい注意を払い、暴飲暴食を慎んでいると言う人に、ガン発症率が多いことが分かって来ました。

 ガン患者の心理的かつ行動面の特長として、仕事への適応力が高く、仕事を通してのみしか、自己表現をすることができない人です。仕事を通して、自分の人生の喜びを見い出そうとする人です。また、このタイプの人は、ワーカホリック的な傾向が強く、自分が「したいこと」よりも、「しなければならないこと」の方を優先させてしまう人です。

 常に、人の眼を気にし、人から自分がどう思われているか、あるいは人からの評価がどうであるか、いつも気にして居る人です。
 家庭と家族に仕え、自分を殺して、会社に、自己の良し悪しの御伺いをたてる「勝ち組人間」の中に多く見られます。結局、「勝ち組」といったとこで、それなりの代償を自分の気付かないところで払っているのです。

 このタイプの人は、いつも規則正しい生活習慣を守ろうとして、周囲の眼を気にしながら生きています。また、「勝ち組」から滑り落ちないように、趣味も持たず、仕事や家庭サービスに打ち込み、その一方でうまく気分転換が出来ません。
 このような人は、慢性的なストレス状態に陥り易く、自然治癒力や免疫細胞の働きが低下してガン細胞の増殖が抑えきれずに、ひいてはガンを発症するのです。

 このタイプの人がガンで入院すると、これまで固定観念で描いたガンの恐怖から抜けだせず、その後は生き甲斐が見出せない為に消極的な思考に陥ります。その為に、ガン細胞への免疫力が更に低下し、治るものも治らなくなってしまうのです。
 まさに、ガン発症とは、自分で作り出している病気と言えます。

福智山に登ってストレスを発散し、三次元空間の中で、ガン恐怖症から解放されよう。



●タバコを辞められない喫煙常習者へ

 タバコを辞められないのは、「辞めようとする意識」に問題があり、これを下界で実行するとしても、大変な努力がいります。
 ところが、山行の「登りの時間」と「下りの時間」の合計5〜6時間の禁煙だけで、その後の禁煙がスムーズに行き、知らず知らずのうちに、いつの間にか、タバコに手が行かないよいうになっていることに気付きます。
 これは山の空気で、心身が洗われた為です。つまり「洗心」が行われたのです。

 健康の為に、「禁煙を」と考えながらも、何回か試みたものの、遂に禁煙が実行できなかった方は、ぜひ一度山行を試みて下さい。そして、試みた結果、それでも禁煙が辞められないのなら、その人は生きながらにして地獄を味あわねばならない、意志薄弱な人です。

 タバコの喫煙は、自分を意志薄弱にするばかりでなく、その煙りは、タバコを吸わない第三者にも迷惑をかけていることになり、人間の行為として、やらかしている事は最低の行為となり、また人種的にも最低と言えます。
 こうした、目に見えない無自覚症状が、自分を傷つけているばかりでなく、全く罪も、落ち度もない、喫煙をしない子供や女性の方、ならびに喫煙をしない成人者をも傷つけているのです。

 まず、喫煙者は自分の喫煙行為で、無自覚のまま、「他人の心身を傷つけている」という自覚をすることが大事です。
 この自覚が深まれば、喫煙など馬鹿馬鹿しくて、タバコを吸う気持ちにはなりません。
 私たちと一緒に福智山に登って、悪しき習慣から解放されましょう。



●斜陽に差し掛かった中小の経営者へ

 会社を潰す経営者は、まずその生活態度を眺めますと、その生活の不摂生にあります。一日24時間が余りにも不摂生で、不健康なことばかりに首を突っ込んでいます。まず、第一番目に生活の不摂生を糺(ただ)さなければなりません。その意味で、社員と社員の家族に奉仕する為に、自ら襟(えり)を糺さなければなりません。

 第二番目に、自分の会社の立て直しは、「自分の手で」という強い信念を持ち、その立て直しを、神のお告げなどに頼り、霊能師や祈祷師や占い師の類を頼ってはなりません。わが身一身の「まごころ」を以て、真剣に取り組めば、斜陽に差し掛かった会社も、許(もと)の伊吹を吹き返します。

 その為には、第三番目として、締まりのある軽快な体躯(たいく)を取り戻さなければなりません。肥満は斜陽へ向かう元凶ですから、肥満を解決し、運気が高揚(こうよう)するように自分自身を向かわせなければなりません。肥満は運気が低下している、身体が赤信号を知らせる警告ランプです。
 肥っていては、小廻りが利かないばかりか、首まで借金で廻りません。
 奉仕者としての責任は大きく、借金経営から借金のない健全経営へと移行しなければなりません。



●身体が重たくて困っている方へ

 鈍重な身体は、心身を傷めます。また、愚行に導く元凶となりますので、良く動ける軽快な体躯が必要となります。人間が動物であると云うことを忘れては行けません。更には、単に肉体を酷使するスポーツだけを遣(や)っていても、それでことが足りると言うものではありません。

 健康を害する、故障だらけに導く、元凶となるハード・トレーニングを止めて、本来の動物としての「運動」が人間には必要なのです。故障だらけ、事故だらけの元凶は、プロスポーツ選手を見れば一目瞭然ではありませんか。
 華々しい芸能界と地続きになったプロスポーツの世界も、それに見合う分の代償を、彼等は支払わされているのです。

 躰(からだ)が重たくなったと感じる人は、スポーツを遣っても百害あって一利なしです。スポーツは、呼吸の吐納法が間違っている為、心臓に負担をかけ心臓肥大症になります。つまり、昨今、突然死などで騒がれている心筋梗塞です。
 躰の重い人は、心筋梗塞に罹る確率が大であると云われています。

 この病気は、冠状動脈の閉塞または急激な血流減少により、心筋に変性・壊死(えし)を起す疾患です。冠状動脈硬化による狭窄部(きょうさくぶ)に、血栓・塞栓・攣縮(けいしゅく)などが加わり閉塞を起すことにより発症します。

 壮年以降の人に多く、肥満気味で、心身の調和が拮抗を失った場合に顕われます。症状としては、急に劇しい胸痛を感じ、悪心・嘔吐・顔面蒼白・血圧降下を起し、ショック状態となります。重症の場合は死に至ることもあるので要注意です。

 食への間違いを正し、動蛋白やアルコールの摂取を控え目にして、軽快な体躯を福智山ハイクで取り戻そうではありませんか。



●痔疾で苦しんでいる人へ

 痔(じ)で悩んで居る人は、その人自身の食べ物と、内臓環境の悪さに問題があります。特に腸内環境を健全に保つことは大事であり、この環境が悪いと、便秘をしたりして「宿便の元凶」を作ってしまいます。宿便状態になると、腸内で宿便となる腐敗物質が凝固し、慢性的に血液を汚染し、種々の病気を発症させます。

 また、身体を動かさないことにも原因があり、足腰が弱り、腰骨の骨盤が弛(ゆる)んでいる証拠です。此処が弛んで居る人は、その殆どが、痔疾などの、何らかの悪影響から病気を抱え、痔疾はその代表的な疾患です。
 こうして一旦痔を患いと、肛門およびその近接部分にこの病気特有の症状を顕わし、痔瘻・痔核・肛門裂傷・脱肛などを含む見苦しさが、一生涯永遠に続くことになります。

 これから解放される為には、まず、日本人には必要無い、鳥獣の肉などの動蛋白食品や乳製品、ならびに食肉加工食品などの、腸内で腐敗する食品を避けて、できるだけ「正食」に近い、穀類を多く摂り、穀菜食にする食餌(しょくじ)に心掛けねばなりません。

 また、「正食」を実践しながら、断食をして、医者いらずで痔疾から完全に訣別する事が出来ます。ただし、断食は自己流で遣っては非常に危険で、他にも病気を抱えている人は、更に病状を悪化させます。したがって正しい断食指導者の助言により、実行しなければなりません。

 また、福智山ハイクをして度々、足を使って「歩く」あるいは「登る」という行為を繰り返せば、食餌法を正しくして行くうちに、痔は自然治癒力により完治して行くものです。



●腰痛や坐骨神経痛に苦しめられている人へ

 腰痛や座骨神経に罹(かか)る人は、動蛋白摂取と、遅い時間(午後9時過ぎ以降の食事を摂ると内臓を疲弊させ、腰骨の関節を弛めギックリ腰などの腰痛になる)や深夜などの夜食を摂ることに問題があり、また、極めて運動不足です。食事を腹八分以上に食べ、それで運動しないとなると、肥(ふと)るばかりでなく、身体の動きを鈍重にして、関節部や末端の節々を弛ませ、腰痛や坐骨神経痛の病因になります。

 自分では毎日散歩をしたり、毎朝・毎晩、速足ウォーキングをしているという人でも、腰痛や坐骨神経痛に罹(かか)ります。この原因は、単に平地だけを速足でウォーキングしても解決しないのです。自分の足を「膝の高」さより、もっと高い処に足を上げる必要があります。

 特に坐骨神経痛は、坐骨神経の経路に沿って感ずる疼痛です。臀部ならびに、大腿後面から下腿後面にかけて、更には足部にかけて圧痛点があります。また、腰椎下部の椎間板ヘルニア(一般には「ギックリ腰」の名で知られている)など、脊椎(せきつい)の損傷によるものが多いようです。これまでに腰を傷めたことのなる人は、四十代以降になると、しょっと足を滑らせただけで、股関節を亜脱臼させ、坐骨神経痛に罹(かか)り易いようです。

腰骨正面と顴骨。顴骨は下肢帯をつくる不規則な大きな骨で、左右一対からなる。これは腸骨ならびに坐骨および恥骨の三つの骨で構成されている。この三つの骨は会合部の外面には顴骨臼という深い関節窩があって、大腿骨の頭が入り込み、股関節をつくっている。坐骨神経痛はこの会合部が亜脱臼することによって起る。
 また、椎間板ヘルニアの常習者なども、坐骨神経痛になり易く、骨盤の関節が弛んでいる為である。

 また、坐骨神経は、下肢の運動や知覚を司る神経系です。この神経系は人体内では最長の神経です。
 仙骨神経叢(せんこつしんけいそう)から出て、大座骨孔(だいざこっこう)を通り、臀部(でんぶ)から大腿後面をほぼ垂直に下行し、下肢の筋や皮膚に分布しています。また膝窩(しっか)のやや上方で、総腓骨(そうはいこつ)神経と脛骨(けいこつ)神経とに分れています。そして、坐骨神経痛の場合は、足を滑らせて、あるいは椎間板ヘルニアの後遺症として、特定の神経の走行に沿って起る痛みを伴い、坐骨の他に、三叉(さんさ)・肋間(ろっかん)神経などに起り易い病気です。

 一方、坐骨神経痛の後遺症は、「自分の足を、膝の高さ以上に上げられない」と云う現象に顕(あら)われます。その後遺症は、往年の格闘技選手やレスラーや相撲取が、晩年、階段すら昇れなくなって、半身不随同様に、無態(ぶざま)な体躯(たいく)になっていることで証明されています。
 平地で、優を誇って居た人は、三次元の山歩きでは、全く無能を曝(さら)してしまいます。

 こうした愚を解決するには、山歩きが一番で、これにより、腰骨関節と股関節関節の接合部が滑らかに動くようになります。これまでに腰痛や坐骨神経痛で困って居た人が、2、3回の登山で、腰痛や坐骨神経痛が治ったと言う話は、よく聞かれるところです。これは接合部の稼動が良くなり、腰痛の原因であった弛んでいた腰骨関節が締まったと考えられます。
 つまり、人間は単に二次元平面だけではなく、三次元立体における、山行きにも適した体躯(たいく)を持っているのです。



●多喰いの大食漢の人へ

 多喰いは、脳の「満腹中枢」が故障していることで起ります。ここが故障して居る人は、喰(く)っても喰っても喰い足りず、したがって、多喰いをしてしまします。
 この時の多喰い状況は、パンパンに膨れた腹の固さが、自分の額の固さと同じになるまで多喰いをし、全く自制することが出来ません。

 この為に、大食漢になり、あるいは胃拡張症となります。胃拡張症の人は吐く息が非常に臭く、胃が腰骨の辺りまで下がって居る人が少なくありません。
 胃が異常に拡張して、復原しない疾患です。胃の運動機能が低下し、嘔吐、胃の膨満感、口渇などを伴います。急性胃拡張は、しばしば致命的な症状となり、胃が広がり過ぎて、もとに復元しないと言う恐ろしさがあります。

 そして歳を取るに随(したが)い、三十代始め頃から、頭重や不眠など種々の神経症状を呈し、それに合併するような形で、精神障害が顕われ、後半の人生はまさに生きる屍(しかばね)です。

 一方、一般に「痩せの大喰い」と言う人は、もれなく、総ての人が胃下垂症です。胃が異常に下方に垂れ下がる疾患です。「胃アトニー」とともに、無力体質に多く見られ、しばしば他の内臓下垂を伴います。胃部の重圧・膨満、食思不振のほか頭重・不眠など種々の神経症状を呈することがあります。
 多喰いをして、自らの寿命を縮めているのです。



●拒食症で悩んでいる人へ

 大食漢と裏合わせになったものが拒食症です。これは拒食症などの精神障害からも分かるように、極度の不食と高度の痩せを主な徴候とし、強い肥満嫌悪が起り、心因的背景により、その精神状態は更に悪化させます。これに罹ると、食事を拒む病的な状態が続き、最後は死に至ります。

 また、心因的異常から来る思春期の女性に好発するのが、神経性食思不振症です。
 しかし、こうした人達も、山行を重ねることにより、徐々に心因的病状は改善されて行きます。

山頂からの眺めは、心を浄化して人間の心を洗う。

 このような心と身体の病気に苦しめられている人は、下界の俗世の中に居ては中々抜け出す事が出来ません。まず、下界から脱出し、下界より標高高度を上げて、騒音や淀んだ空気に汚染されていない高所へと、一時的にも移動する必要があるのです。

 健康と不健康の境目は、意識に問題があります。病気になって医者任せで滅びるのを待つだけではなく、こちらから病気を駆逐していく積極性が大事です。消極的な受け身では、ただ病魔から好きにされて、滅びを待つだけの運命になってしまいます。

 運命は自ら切り開くものであり、悪いものはどんどん追い払い、良い物だけを取り込んで健全に体躯を運用しなければならないのです。
 その点、福智山ハイクは最も無理なく、こうした状態からの脱出が、容易に行えます。
 どこどこが兇(わる)いからなどと消極的にならず、自分の方から積極的に駆逐意識を発露させて、不屈の精神で立ち向かう人間に、実は、「幸運の女神」はエールを送り、微笑みかけるのです。



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