山行きの為の装備 2


●山行きの為の装備

 春・夏・秋のハイクの山行き装備は、次の通りです。
 地下足袋にTシャツ、それに100%木綿の武術衣ズボンというのが、「洗心錬成会」の春から秋に懸(か)けての山行きスタイルです。その他の必需品としては、まずリュクサックの良い物を吟味して、これを入手します。

鱒淵ダムの沿線から見た木蔭と湖の風景。福知山登山口に至る沿道からは、こうした景色が楽しめる。

 リュクサックは近年では「バックザック」とも呼ばれ、山登りや、自然に親しむハイクの基本道具の1つとなっています。
 登山中は、両手に何も持たないのが常識です。あえて持つのは、登山用トレッキング・ステッキくらいなものです。

 そして品質と機能に優れた「リュクサック」と「トレッキング・ステッキ」が軽快な運動性を約束し、また、これ等の良質なものを確保する事により、その質の程度が、万一の場合、あなたの命を守ります。こうした物を購入する場合、お金をケチらないことが大事です。

 何処のメーカーかも分からない安物は、縫製(ほうせい)が雑であったり、肩紐(かたひも)の位置などが狂っていたりと、登山には適さないものがあります。こうした不備を、登り始めてから知るのでなく、登る前に確認しておかなければなりません。

 さて、トレッキングの際、両手に何も持たないのは、転倒事故防止と無駄な疲労を防ぐ為で、荷物は手に持たないようにすることが登山の基本中の基本です。この為、荷物を入れるリュクサックは、登山や山行きハイクを大きく左右するポイントの1つとなります。
 そして、リュクサックを購入する際のポイントは、まず「5つの点」に注目しなければなりません。

リュクサックは自分の必要とする装備を完全に収納ができることです。1泊2日の登山旅行で、山室や山荘宿泊の場合は、目安として20〜30リットルの容量が必用です。したがって、日帰りの山行きでも、最低20リットル程度は必要です。
軽くて丈夫で通気性に優れていることです。縫製やチャックの造り、連結金具(ワンタッチ・バックル)などをよく確認し、丈夫なものを選びます。また、肩紐とリックサックの接合部分の縫製などを、よく確かめて選択します。
背負い易さです。リックサックを背負い、各ベルトを調整した時に、リックサックと躰(からだ)の動きが、一体となることが大切で、軽快なフィット感によって、「一体感」のあるものを選びます。同時にメッシュ・パネルなどを使用し、通気性のあるものが最良です。
肩紐のショルダー・ベルトや、ウエスト・ベルト(この部分は取り外しが可能なものがよい)など各ベルトの位置と長さとの関係です。特に肩紐は、長時間背負っても肩に食い込まない、適度な幅と柔軟性が必用です。自分に合ったリュクサックを選ぶことが肝心です。不明な事は必ず登山ショップの店員に訊(き)いて確認し、的確なアドバイスを受けることです。特に肩紐などのベルトの調整は正しく行う必要があり、その機能を充分に生かすものでなければなりません。
昨今は化学繊維が主流です。しかし、特殊な完全防水リックサックは「沢登り用」以外は、完全な防水は不可なので、万一の雨に備えてレイン・カバーを用意しておきます。また登山前にはリュックサックならびにレイン・カバーとも、防水スプレーを掛けることが大事です。山の天気は非常に変わり易いのです。また、夜間の安全性にも配慮したものが最適で、視認性を高める為、反射素材を採用している事が、ポイントとなります。

【リュクサック】
 山行きの目安として、20〜30リットルのリュクサックの奨励商品です。
 古くから登山用品として世界的に有名なメーカーの商品は、肩紐のショルダーベルトや、ウエスト・ベルトなど研究がよくなされていて、したがって遣い易さと、体との一体感があり、山行きには最適です。(写真のお奨めザックは、何れもColeman製です。登山用品の古くからのメーカーなので信頼がおけます)

20リットルもの背面裡側。
20リットルもの背後側。

30リットルもの背面裡側。
30リットルもの背後側。

 最近はトレッキングに必要な必需品が、コンパクトに納まるリュクサックが開発され、非常に使い勝手がよく、フィット感と通気性に優れ、重量を軽くしているところが特長です。また30リットルものは、「クーラー・ポケット」などがついていて、ペットボトルや弁当などを、この中に収納できるようになったものもあります。

 また、コードポートがバックの上部に着き、メインルームの背面側にポータブルオーディオ機器などが収納可能になっていて、イヤホーン・フォルダーなどの機能が着いているものもあります。

 その他の携帯品として、日帰り、1泊2日あるいは、それ以上の登山旅行をする場合は、次のものを用意します。
 福智山はこの地域では最高峰の山で、福智山系には、北九州市八幡東区に位置する皿倉山(さらくらやま)から始まり、南へ尺岳(しゃくだけ)、福智山、牛斬山(うしきりやま)、香春岳(かわらだけ)と続く山並みがあります。こうした九州自然歩道を総て制覇するには、それなりの日数が掛かります。

福智山の避難小屋付近にある九州自然歩道の案内板。

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 また、北端には皿倉山と、更には南端の香春岳があります。そして、九州自然歩道が八幡東区の皿倉山へと延々と続いています。こうした福地山系を登山旅行するには、一日や二日では終らず、三日以上の日程が必要です。その為にも、収納容積の若干大きな、30リットル級以上のリュクサックは必要です。


【登山用トレッキング・ステッキ】
 
山行きに欠かせないのが、躰(かだら)を支える為の「登山用トレッキング・ポール・ストック」です。
 ポール・ストックには、手持ちが「I字型」と「T字型」とのものがあります。
 握り易いグリップエンドで、持ちやすく疲れない、そして軽量性に富んだ物が最適です。そしてストックは、足腰の負担を補助するのが一般的な使用方法で、老人の持つ杖と同じ役目をもちます。

 最近の製品は、濡れた岩場も安心の強力な滑り止めなど機能がつき、スライド式で、身長に応じて、長さを無段階(130cmまで自由に伸縮)調整でき、登り降りや、好みに応じて微調整が可能なものがありますので、好みに応じて好きな物を選びます。そして、手にやさしいグリップで、推進力が増して、早く登れる物が最適です。

登山用トレッキング・ステッキのI字型とT字型。アンチショック機能は何れのホール・ストックにもついているが、I字型はT字型に比べて、やや小さめの物を選ぶのがよい。
 I字型の物はグリップを横から掴む形となるので長めになり、肘を直角に曲げた時の長さ
(高さ)を基本に調整する。
 また、T字型の物はグリップを上から掴む形となるので短めになり、肘を直角より若干伸ばした時の長さ
(高さ)を基本に調整する。(写真は何れもポール・ストックを内側に引っ込めた状態)

 I字型の物は一般的なストックで、基本的には2本1セットとして、両手に持って使用します。また、T字型の物は、基本的には1本で使用します。
 ポールを積極的に使って、バランス取りながら、推進力ならびに制動力の補助を行います。
 そして、突いた時のショックを和らげる為の「アンチショック機能」のついたものを選びます。

 但し、アンチショック機能は、手に掛かる負担を軽減してくれる物なので、特にグリップを上から掴む形となるT字型のポールの場合は有効ですが、I字型のように、スキーのストックと同じようにして、両手で積極的に使うものは、推進力を吸収されてしまうデメリットもありますので、この辺を考え、使い易さと、自分の体格・体型に合ったものを選びます。

 そして、絶対に忘れてはならない事は、山行きを遣(や)る登山者は、出来るだけ総ての装備を自前で揃(そろ)え、他人の物を貸し借りしないという事です。山行きの前日か、当日になって、何々を忘れたから貸して欲しいなどという人が居ますが、こうした人は登山者の資格を失っています。山に登る資格はありません。他人の物を当てにして、絶対に貸し借りをしないと言う事です。

 それと同時に、一度入山したら、自分の事は、自分で出来ると言うのが登山者の礼儀であり、一切の、自分の不注意による事故や怪我は「自分で責任を取る」という心構えが大事です。
 岩や石を踏み外して転落して大怪我をするとか、足のスタンスの取り方の誤判断で捻挫をしたり骨折したり、足取り・歩幅の不規則で、樹木の浮き出た根に足を引っ掛けて骨折や捻挫をした場合は、山行きのリーダーを責めるのではなく、自己責任において、自分自身の責任であり、「他人に迷惑をかけない細心」の注意が必要です。

 こうした「細心の注意」は、登る時よりも、下る時に細心の注意を払わなければなりません。登山者一般の考え方には、登る時よりも、下る時の方が簡単であると安易に考えている人がいますが、これは大変な間違いです。多くの事故は、山を降りる時に多く発生します。下りのコースこそ、細心の注意を払い、心の隙(すき)を作ってはなりません。

 鱒淵ダム周辺の沿道を歩くと、直ぐに分かることですが、「落石注意」の看板が至る所に架(か)けれられていて、登山者や、周辺歩行ハイカーに落石があることを警告しています。鱒淵ダム付近で標高100mですが、福智山の山質も、これと同じ地質であり、中腹以下の処は脆(もろ)い岩肌が多く、落石にも注意しなければなりません。一旦、入山すると「隙(すき)を作ってはならない」という事です。

 万一事故が起った場合、山頂ならびに、山の中腹であっても、また鱒淵ダム入口(ここにはダム管理事務所がありますが)でも、一切の携帯電話が通じない為、大怪我をしても救急隊などの医療機関に連絡をとることが出来ません。もし、大怪我などをすると、周りの人に大変な迷惑を掛け、楽しい山行きも、散々なものになってしまいます。

 そうしたアクシデントに見舞われない為にも、入山前に、充分に装備の点検をし、まず、リュクサックの担ぎ具合やバランス状態、あるいはトレッキング・ポール・ストックは自分の体格に合わせたものを使用して、正確に調節(130cm以上は伸ばさない)し、こうした命に密接に関わる道具を、他人からの貸し借りによって賄(まかな)ってはなりません。

 また、装備品を購入される場合は、出来るだけ信用のおけるメーカー品を購入し、使用中に不具合が多く発生するメード・イン・チャイナ−などの安物は避けるべきです。
 山行きの「装備品の値段」は、つまり「自分の命の値段」と同じであり、安物を好む人は、また、それだけ自分の命の値段も安いと言う事になります。呉々も安物に、ご用心下さい。

 福知山クラスになりますと、春・夏・秋のスリー・シーズンでも、トレッキング・ポール・ストックが必要になります。また、厳寒の冬場(1月中旬から3月上旬に懸けて)では積雪があり、氷雪面上の足場作りで、躰(かだら)の確保などに用いるピッケル(アイス‐アックス。鶴嘴(つるはし)付の登山杖)が必要でしょう。これだけでも、福知山登山を甘く見ない事です。夏場の山行きとは異なりますので、こうした事も肝に銘ずる必要があります。

 鱒淵ダムの福知山登山口には、自然林の手製の杖が幾本か設置されていますが、既に腐っている物もあり、使用中に折れる事があります。やはり登山用の杖としては、自前で、自分の躰に合ったメーカー品のトレッキング・ポール・ストックを準備したいものです。



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