現代栄養学の誤り
 栄養学とは、短直に言って栄養について研究する学問です。
 栄養素の代謝、所要量、過不足による病態、そして食品からは各々の種類、組成、調理法で、更に疾患時についての食事は生理学、生化学、病理学、衛生学の立場から探究研究しようとする近年に始まった新しい学問です。
 しかし新しいだけに、背後には何者かの作為が感じられるのも、また事実です。こうした現状の中からアメリカ発の「現代栄養学」が学問的な産声を上げました。

 さて、近年に行った総理府の「食生活調査」と「農村の役割に関する世論調査」には、次のような結果が上げられています。

 まず国民の食生活には、
 ・第一位、栄養のバランスを考える……57.11%
 ・第二位、カロリーや塩分の摂り過ぎに注意する……51.2%
 ・第三位、規則正しい食生活をする……42.5%
 ・第四位、安全な食品を摂るようにする……41.2%
 ・第五位、品質や鮮度のいい物を摂るようにする……40.4%
 ・第六位、好き嫌いをなくす……28.3%
 ・第七位、家族揃っての食事を多くする……27.5%
 ・第八位、美味しい物や好きな物を食べ、食生活を楽しむ……21.6%
 ・第九位、安い食品の利用を積極的に行い、食費を抑える……14.8%
 ・第十位、食事の楽しみ方を工夫する……14.5%

 この結果を見ますと、第一位の「栄養のバランスを考える」と、第六位の「好き嫌いをなくす」の合計を合わせると約85%の人が、同じ意識を持っていることになります。

 さて現代栄養学では「六つの基礎食品」というものがあります。
 その第一群としては魚、肉、大豆製品が上げられ、主に良質蛋白質の供給源をこれに求めよとしています。
 次に第二群としては牛乳、乳製品、骨ごと食べられる魚を上げ、主にカルシウムの供給源としています。
 また第三群としては緑黄色野菜を上げ、主にカロチンの供給源。
 第四群としてはその他の野菜、果物を上げ、主としてビタミンCとミネラルの供給源。
 第五群として白米、白パン、麺類、薯類を上げ、主として糖質性エネルギーの供給源。
 第六群として油脂を上げ、主として脂肪性エネルギーの供給源として、以上をもって現代栄養学の「六大基礎食品」としています。

 ところが六大基礎食品を食することと、長寿を維持し、元気で働くという現実は、必ずしもこうした六つの食品を食べる事と、全く一致しません。
 明治生まれの八十歳以上の老人達の多くは、その食事メニューの内容が、「朝ばく、昼ばく、おこじゅばく、夕めしゃ、おこじゅの残りばく」と言って、肉や牛乳、チーズなどの乳製品など殆ど食べた事のない時代を経験し、高齢者のメニューから窺えることは「少食」であり「粗食」であったということです。
 更に婦人に至っては、僅かこれだけのメニューで、よく野良仕事の重労働にも耐えたと言えます。

 それが最近では穀物菜食主義が忘れ去られ、米は食べても精白米一辺倒になり、肉や大型高級魚(まぐろ、鯛、はまち、ひらめ等)、牛乳や乳製品、そして卵中心の食生活に変わり、この欧米式食生活の模倣によって育った戦後生まれの若い世代は、皮肉なことに三大成人病で苦しんでいるという現実があります。
 そして現代栄養学に掲げられている学問のテーマで、最も恐ろしい事は、肉、牛乳、乳製品、卵といった動物性蛋白質食品を、優秀な食品であると指定・指導していることなのです。
 また以上を「完全栄養食品」と題しています。

 八十歳以上の老人が、若い頃殆ど、「完全栄養食品」と自称する食品を殆ど食べず、今でも元気な老後を過ごしているのに、完全栄養食品を食べた若い世代は、成人病で倒れているという現実を見れば、現代栄養学の示す方向は誤った方向を示していることは一目瞭然になります。

 さて、では何故「肉、牛乳、乳製品、卵といった動物性蛋白質食品を優秀な食品である」と断定しているのでしょうか。


 どうやらこの裏側には、巧妙なアメリカの食物メジャーの仕掛けがあるようです。
 それはFOAが示す「蛋白質のケミカル・スコア」に仕掛けがあります。これは一般庶民の栄養学と医学の無知をついた巧妙な仕掛けです。
 このケミカル・スコアは、窒素1gあたりの各必須アミノ酸の量を「FOA基準配合」としているからです。
 そしてこの中で注目すべきことは、肉や牛乳を「良質の蛋白源」とするために、「卵を最初から100の基準値」に置き、卵と比較してケミカル・スコアが作られていることです。

 卵を100の基準値において他の食品と比較すると、牛乳が80、カゼイン80、卵アルブミン100、牛筋肉80、牛心臓80、牛肝臓85、牛腎臓80、豚ヒレ肉85、大型高級魚75、精白米75、精白小麦80、ライ麦80、大豆75、各チーズなどの乳製品75〜80とし、小魚や玄米などの穀類は50以下の低い数値に抑えられています。

 これから考えると、プロテイン・スコアやケミカル・スコアをもって、肉は良質の蛋白質であるという作為的な意図が窺われ、大衆・庶民に向けられた食の理想像が、最初から固定されているということになります。
 つまり仕掛けの段階で、肉や牛乳や卵を「良質の食品」と決め付け、これをケミカル・スコアにして証明したに過ないといういうことが分かります。

 そしてこうしたことが国連の下部機関のFOAで発表されているということは、国連が、もともと第二次世界大戦当時の連合軍であり、これがいつしか国際連合軍になって、敗戦国・日本に食事情を押し付けるという現実が否めないのです。
 これは国連の示す「United Nations」が国際連合軍の意味であり、日本人はこれを「国際連合」と誤訳したところに、日本人の悲劇が始まっています。
 そしてこの悲劇は、国連FOAが示す「ケミカル・スコア」によって表面化しました。
次へ