道場憲章 7



昇段 (2)

1.昇段受検審査
 段位検定は毎年一回の夏季合宿セミナー【註】総本部尚道館で毎年8月11日〜15日に行われる「夏季合宿セミナー」において、宗家が臨席のもとで実施)時にわれる。
 初段(初段補は含まない)以上の昇段を希望する者は、自身のこれ迄の修行段階を、この審査によって試す事が出来る。

 受検資格は、まず総本部尚道館で行われる夏季合宿セミナーの全日程に参加しなければならない。また、西郷派大東流合気武術に関する術理的な儀法ぎほう/技法)や実技審査があり、更に面接審査の後、厳選して有段者として恥じない人物に限り、その授与が行われる。
 以上を要約すると、喩(たと)えば「初段」の場合、次のようになる。

木刀素振りが正しく出来、剣術を通じた合気揚げの論理を理解していること。
腕節棍の第一の型第四の型までが出来、合格タイム内に正しく出来ること。
夏季合宿セミナーの全日程を終了していること。(途中参加は不可)
西郷派大東流合気武術に関する術理的な儀法(技法)七儀法の中から、四儀法が出題され、これが正しく出来ること。

 また、初段の受検資格は、昇段審査受検の三ヵ月以前に、「初段補」あるいは「第壱級」の資格を有し、同時に武術家である前に、社会人であると言う認識と、その自覚が求められる。
 したがって、次の者は昇段できない場合がある。

実技は多少できるが、人間としての人格や品位の形成が未熟である。
社会の一員として礼儀がなっていない。横柄かつ傲慢である。
観察眼に疎(うと)い、注意力が足りない。見逃しや聞き逃しが多い。
行動や動作が鈍重である。機敏さや迅速さに欠ける。
自分を棚に上げて風説を好み他を中傷誹謗する。何事も批判的である。
夏季合宿セミナーに一度も参加した事がない。
武術家としての戦闘思想や哲学を持っていない。

 以上に該当する者は、わが流では初段以上の黒帯が許可され、「西郷派大東流合気武術」の有段者として名乗ることができない。
 更に、初段以上の黒帯になれば、その社会的責任も大きい。その為に、受検者は下記の手順を追って合格への道を目指す。

 実技審査は出題儀法をあらかじめ、受検日の数週間前から発表し、発表される儀法数は坐法、立業を中心とした「合計七儀法」である。このうち、「四儀法」が実技検定に選ばれ、儀法の流れや目配り、足捌き、目付、転身技術、呼吸法、残心などの細かい点が審査される。これに合格した者だけが、次の面接審査に向かう。
 以上の総合評価し、受検者が合格基準に達しているかの有無が議せられる。そして初段以上の黒帯として相応しい者に限り、各段位が授与される。

昇 段 試 験 の 合 格 へ の 手 順
行事参加審査 実技審査 面接審査 総合評価

西郷派大東流合気武術・全国有段者会が主催する夏季合宿セミナーの総ての日程に参加すること。

学科審査に合格した者のみが実技審査を受検出来、あらかじめ出題儀法が予告され、実技審査における指定儀法を実技する。

実技審査に合格した者は、西郷派大東流合気武術の有段者に相応しいか、口答質問において、礼儀の熟度と品性を議せる。

左記の手順を踏み、三審査を総べて合格し、人格ならびに品格ともに、その合格基準に達した者を昇段審査の合格者とする。


2.段位について
 段位取得合格者は、西郷派大東流合気武術総本部・尚道館の発行する「有段証明書」ならびに、有段者を証明する「IDカード」を携帯する。この携帯によって、自らの段位と身分を確認するのである。
 またわが流では有段者の分類を次のように行う。
 初段補から参段迄を低段者。四段から六段迄を中堅段位者。七段から十段迄を高段者と分類する。


3.有段証明書とは(総本部が発行する段位)
 有段証明書とは、西郷派大東流合気武術総本部・尚道館が全ての道場を総括し、発行する証明書である。この証明書によって、自らの段位と身分が証明される。
 そしてこれ以外の証明書は、わが西郷派大東流合気武術において一切存在しない。

【註】かつて、わが流に数年間所属し、辞めた指導員や師範が「支部名儀」あるいは「総支部師範」などの勝手な名前を以て、これを勝手に発行する「級位」ならびに「段位」は、わが流と一切関係なく、またこうした免許状ならびに証明書は、総べて無効である。

 また西郷派大東流合気武術は、初代宗家・山下芳衛先生の儀法と、その霊的神性を正統に受け継いだ流派であり、現宗家・曽川和翁先生の署名捺印(宗家の名および宗家印)する以外の免状以外は存在しない。

 更に、「西郷派大東流合気武術」という武術名称は、わが流独特のものであり、わが流以外に本名称は存在しない。

 また、アメリカやカナダやメキシコなどに、西郷派大東流合気柔術なるものがあるが、この武道団体と、わが流は一切関係ない。
 こうした「西郷派大東流」の流名を掲げる団体の最高師範が、かつて中国の某地において山下芳衛先生から、中国人の某師範を通じて、習ったと謂(い)っている流派があるが、これは根も葉もない事であり、こうした団体と、わが流は無関係である。

 こうした団体の言によると、かつて山下芳衛先生が中国のかの地において、中国人の某師範から中国拳法を習ったので、今度はそのお礼に、山下芳衛先生が某師範に西郷派大東流合気柔術を教え、その西郷派大東流が太平洋戦争前にアメリカに伝わったとするものであるが、これは事実無根である。
 また、昭和初期に、わが流がの継承が外国に出て行った形跡は一切無い。
 したがってこの団体が発行する、免許状ならびに証明書は、総べて無効である。

 さて、西郷派大東流合気武術総本部・尚道館と、西郷派大東流合気武術宗家の名を以て発行される「有段免許證」と「段位証明書」は、下記の見本の示す通りである。




黒帯の授与について
 
初段以上【註】初段補は含まない)の黒帯になると、その授与は直接宗家からなされる。黒帯を授与される時は、宗家臨席の席上で行われ、この際、授与を受ける者は服装を糺(ただ)し、厳粛にこれを授からなければならない。
 また、師範号を持つ紅白帯や真紅帯についても同様である。


段者・初段から五段までについて
 ・黒帯の表示(西郷派大東流合気武術の表示の許可)と身分と階級
 
初段……朱子黒帯に赤の5mm幅線一本(女子の場合は黒帯の中央に幅広白線の入ったもの)
 弐段……朱子黒帯に赤の5mm幅線二本(女子の場合は黒帯の中央に幅広白線の入ったもの)
 参段……朱子黒帯に赤の5mm幅線三本(女子の場合は黒帯の中央に幅広白線の入ったもの)
 四段……朱子黒帯に赤の5mm幅線四本(女子の場合は黒帯の中央に幅広白線の入ったもの)
 五段……朱子黒帯に赤の5mm幅線五本(女子の場合は黒帯の中央に幅広白線の入ったもの)
 師範号や指導員号の免許持たない六段……朱子黒帯(滑らかで光沢がある黒帯)に1cm幅と5mm幅の金線各々一本。(女子の場合は黒帯の中央に幅広白線)

 
【註】黒帯表示において初段以上に至り、はじめて「合気武術」の名称を使う事が許され、帯表示の名称は、「西郷派大東流合気武術」の流名を名乗る事が出来る。
 また、黒帯以上の許可を許される者は、直接宗家より黒帯の伝授を受け、その拝領が許される。


・有資格と六段の段位を持つ者の黒帯の表示
 
弐段以上の段位を有し、准指導員(弐段以上の指導員師範資格者)、正指導員(参段以上の指導員師範資格者)、准師範(四段以上の指導員師範資格者)の称号ならびに六段の段位を持つ者は、フルネームで氏名を刺繍し、その下に各々の称号を表示する。六段の場合は、フルネームで氏名を刺繍し、その下に六段と入れる。



資格者・六段から八段までの師範資格者について
 ・紅白帯の表示と身分と階級(ただし、師範以上の免許を持っている場合のみ)
 
六段……紅白帯に1cm幅と5mm幅の金線各々一本。
 七段……紅白帯に1cm幅と5mm幅の二本の金線。
 八段……紅白帯に1cm幅と5mm幅の三本の金線。

 また、六段以上で、師範、皆伝師範の称号を持つ者は、フルネームで氏名を刺繍し、その下に各々の称号を表示する。



7有資格者・九段から十段までについて
 ・真紅(茜染/あかねぞめ)の表示と身分と階級
 
九段……真紅の幅広帯に1cm幅と5mm幅の四本の金線。
 十段……真紅の幅広帯に1cm幅二本の金線。
 宗家……西郷派大東流合気武術の道統であり、わが流の最高権威者であるとともに、最高実力者である。

 また、宗家の帯の表示は、真紅の幅広帯に、縦に黒幅の線が中央に入り、この帯は、尊敬と畏敬の念を込めて、准指導員補以上の有資格者各位の募金によって、曽川和翁宗家に寄贈されたものである。




8.有段者の義務と有段者会費の納入について
 
黒帯(初段補)以上の有段者は、有段者年会費を支払わなければならない。毎年定められた納入日迄に有段者年会費を払い、現在の段位と身分の確認を行う。
 またこの、有段者としての義務を怠った場合、段位を取り消される事があるので注意されたし。

 さて、わが流の門人は初段補以上の有段者に対し、有段者会への入会が義務付けられ、年会費を払うと同時に、自分が西郷派大東流合気武術の有段者として、わが流に対し、何に貢献できるかを各々に問うている。
 有段者は自分の取得する帯をひけらかし、虎の威を藉る、こうした程度の手合いではない。また特典や恩恵を期待するのではなく、どうしたら自分の信じる流派に貢献できるか、その事に心を砕くべき義務を負う事になる。

 以上の貢献への意識を露にして、日夜の修行に邁進・精進し、ひとたび事がある場合には、自ら有段者としての義務を果たす事を、有段者各位は自覚するべきである。


9.有段者会について
 
初段補以上の有段者によって本会は運営される。また、毎年年度始めに総本部より有段者としての心得を教示する有段者向けの冊子『武備録』を拝読する事が出来る。
 なお、有段者会費として徴集された会費の一部は、総本部・尚道館の道場修繕費に当てられ、毎年の建物の管理や補修工事などのメンテナンスに役立っている。