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●食事病が関節の畸形と筋肉のアンバランスを生み出す

 骨盤の仙腸関節が弛(ゆる)むと、下半身の筋肉が弛み、腰回りが膨張し、下腹が出て、太腿の皮膚には張りがなくなります。また、足も浮腫(むく)んだようになり、足全体が重たくなって、鬱血(うっけつ)が起ります。腰が重くなり、度々、ギックリ腰のような椎間板ヘルニアが起ります。
 鬱血は、局所に静脈血が増している状態ですから、暗紫色を呈して腫大し、慢性化すると浮腫、線維増生を伴う現象が起こります。

 次に、骨盤の弛みに合わせたかのように、肩凝(かたこ)りが始まります。
 これは既に述べたように、肩胛骨が弛むのが原因です。肩胛骨の筋肉が弛むと、背中が曲がり猫背となって、胃や心臓に負担がかかり始めます。この体型的な顕われが、「二の腕が弛む」という現象です。
 この現象は、肩凝りが、自分ではそんなに酷(ひど)くなっていないと思っていても、要注意です。胃を圧迫し慢性胃炎になる元凶を作り、また心臓を圧迫するので、動悸(どうき)や息切れ状態を作り、真相傷害の病因を齎(もたら)します。

 また、頭蓋骨の関節が弛むと、顎(あご)や目の下に贅肉の弛みが顕われ、ここが膨らみます。顎が二重顎・三重顎になったり、目の下にクマが顕われ、ここが膨らんだようになって居る人は、後頭骨(こうとうこつ)の関節が弛んでしまった人です。

頭蓋骨の関節の弛みから起る顔面への異常の顕われ。頭蓋骨の関節が弛むと、顔全体が膨らんだようになり、もうこの時には、毛細血管等の目詰まりを起している症状が顕われる。顔の膨らみは、アルツハイマー型痴呆症の予兆でもあるので、特に後頭骨の関節の弛みには注意を払いたいものである。

 全体に頭蓋骨の関節が弛んで居る人は、顔全体が膨らんだように大きくなり、目の下にクマが出来、顔の筋肉が鼻の方に寄せられ、頬が膨らんで、口角(こうかく)部分があたかもブルドッグのように垂れ下がります。中年以上の年齢で、こうした顔付きになって居る人は、後頭骨の関節が弛み放しになっている人です。

 また、後頭骨の関節が弛み放しになると、朝の目醒(めざ)めが悪くなり、昼食後は直ぐに眠気を催し、気力が薄れて怠け者になったり、根気がなくなります。躰(からだ)を動かして、自ら率先するようなことがなくなり、口ばかりが達しゃになって、口煩(くちうるさ)い性格へと変貌(へんぼう)します。口煩い人は、後頭骨の関節の弛みが考えられますので、自分が「口煩い」と感じるようになったら、頭蓋骨の関節の弛みが考えられます。

 頭蓋骨の関節が弛むと、視力の低下とともに、歯が弱くなります。また脳へ送る血行が不良となりますので、毛細血管に目詰まりが起り、こうした状態は毛細血管が非常に細い為、CTスキャンにも映らないような細部現象が現れます。

 成人の血管は、大動脈、大静脈のような太い血管から、100分の1mmの極細の毛細血管まで、総(すべ)て併せると、その血管総延長は約10kmといわれています。これは地球の円周で表現するならば、2周以上になるといわれます。そして、血管総延長の99%を占めるのが毛細血管です。この毛細血管の中には、肉眼では確認不能な、赤血球の直径より細い血管も多くあるといわれています。

 また、肺の中で酸素と二酸化炭素を交換する為に、この箇所を取り巻いている毛細血管も、腎臓で老廃物を濾過(ろか)して尿を作る毛細血管も、電子顕微鏡でしか見ることの出来ない血管です。肝臓も毛細血管の塊(かたまり)であり、小腸で最小単位にまで分解された栄養分は、まず肝臓に集められ、躰に利用できる形に変換されてから全身の必要な箇所へと栄養分が運ばれます。
 したがって、血管が目詰まりをする現象は、まず毛細血管の血行不全から始まるのです。その元凶が頭蓋骨の関節の弛みです。

 また、脳梗塞や心筋梗塞は、脳や心臓の動脈に血栓などができる血流障害です。詰まった箇所の先には、血流が流れない為に、酸素や栄養などの補給が出来なくなり、これにより脳梗塞や心筋梗塞が起ります。
 しかし、毛細血管は極細である為、1mmの百分の一の傷や変質は容易にCTスキャンやレントゲンに映ることはありません。こうした医療機器に映し出される場合は、かなり症状が進んだ状態であり、太い血管に映し出される以前に、毛細血管では様々な箇所の目詰まりしていたと考えられます。

 血液がスムーズに流れないという事は、白血球などの免疫細胞も運ばれない為、その部分の免疫力も極端に低下してしまいます。その結果、病原菌の繁殖や、ガン細胞の増加が食い止められなくなり、免疫細胞が働かないまま、やられ放題になってしまうのです。

 頭蓋骨の関節の弛みは、最初細部現象として顕われ、毛細血管の目詰まりが始まり、「顔が膨らんで見える」と感じたら、既に痴呆症の初期状態にあると疑ってみなければなりません。
 しかし、毛細血管の目詰まりは、CTスキャンにも映らない為、この初期状態を知るには、顔の筋肉の弛みや、膨らみで判断しなければなりません。

 顔の筋肉が垂れ下がった。顔が膨らんだように見える。目尻の舌にクマが出来、膨らんでいる。口角が垂れ下がっている等は、頭蓋骨の関節の弛みから起るものです。
 また、忘れ物が酷くなった。物覚えが悪い。気が散る。集中力がなく、イライラする等も、頭蓋骨の関節の弛みから起るもので、食事の誤りである「食事病」が原因しています。まず、食事を改め、正食を正食するべきでしょう。



●正食が骨盤・肩胛骨・頭蓋骨の関節の弛み止める

 正食とは、「穀物玄米菜食」の事です。一般に「正食」と云えば、菜食主義と勘違いされるようですが、正食は単なるベジタリアン的な指向で、食事をするのではなく、玄米等の穀物を主食にして朝食抜きの一日2回【註】朝は「玄米スープ」と昼と夕の一日2食。朝は食事を摂らず液体食を摂取して、排便を促す)の食餌法です。

 欧米各国のベジタリアンは、魚肉や鶏肉や獣肉を排して、野菜のみの食事をするという発想によって、食事法が実践されていますが、これは本来の正食とは異なります。ベジタリアンの中心課題は、野菜を主体にした「穀菜食主義」ですが、正食は主食を「穀物主義」に置いていることです。つまり「米を食べる」ということなのです。

 「米を食べる」の発想の裏には、人間の歯型が意味する、「歯の構造」が考えられます。人間の歯の構造は、「人間が何を食べたよいか」ということを如実に教えています。したがって、玄米等の穀物を食べるように出来ている歯が「臼歯」です。

 ライオン・虎・犬・猫などの動物の歯は、「鋸切(のこぎり)歯」です。これは堅い骨や肉を噛み砕くのに適している歯です。しかし、草類や穀物類を食べるのに適していません。
 一方、牛・馬・羊のような草食動物の歯は、平歯であり、隙間(すきま)なく生えており、その面は平らで、波のような波紋(はもん)があり、下顎(したあご)が斜や左右に動くようになっています。これに比べて肉食獣の顎の構造は、下顎が左右や斜に殆ど動きません。

 草食動物の歯の構造と顎の仕組みは、最初から菜食であると言えます。
 そこで人間の歯の構造を考えると、一番多いのは「臼歯」です。牛場を持つ人間は、草食動物以上に下顎が前後左右に動きます。更に臼歯の構造をよく視ますと、その構造は縁が高く、中が少し窪(くぼ)んでいます。これこそ「菊座形」であり、上下の歯を噛み合わせると、中に大小様々な粒状の空間が出来ます。

 この構造こそ、人間が「穀物菜食」をする大きな要因を作っていることが分かります。穀物の粒を噛みこなすのに適合した自然の造りです。
 『易』には、「頤(あご)は貞(ただ)しければ吉とは、正を養えば吉なり」とあります。この事は人間が、他の動物の何れにも属さず、肉食動物でもなければ草食動物でもなく、しかし草食動物に近い、穀物菜食動物であると言う事が分かります。

 以上からすれば、人間は単にベジタリアンであってもならないと言う事が分かります。人間の歯の構造に基づき、然(しか)も、土地の風土や気候を考慮しなければならないのです。ベジタリアンの主張するところは、食の基本は雑食で、正食ではありません。

 菜食的な雑食が多くなると、暗黙のうちに「夫婦アルカリ」の理論における、カリ塩(穀菜食のみ)を主体として、ナトロン塩を退ける主義で貫かれている為、カリ塩とナトロン塩の「夫婦アルカリ」のバランスが崩れ、偏った無機物摂取になっていきます。これは、肉食主義に対峙した、肉を退ける対抗策の食事法と言えます。これもある意味で、天地大自然の摂理から外れた考え方と言えましょう。

 「夫婦アルカリ」についてはdaitouryu.net【大東流霊的食養道】を参照下さい。

 人間の歯の構造から考えれば、穀物菜食を正食とする考え方が、最も自然であり、そこに天が命を育てる真理があるのです。
 また、人間の一日のリズムと云う、骨の開閉作用があることに注意しなければなりません。人間の骨は一日のうち、開いたり閉じたりしているのです。そして骨の開閉に合わせて、食餌法を実践すれば、関節の弛みを食い止め、骨の開閉を一日のリズムで規則正しく行う事が出来るのです。



●骨盤・肩胛骨・頭蓋骨の関節の弛み

 骨盤・肩胛骨・頭蓋骨の三つの弛みは、一箇所だけが弛むと云うことはありません。三箇所全てが、開閉作用を行い、異常がある場合は、三箇所同時に弛み放し状態が起ります。
 こうした弛みの原因は、その第一が食餌法の誤りが挙げられます。
 次に、左右の拮抗が崩れ、バランスの悪くなった状態が、三箇所の関節の弛みを齎(もたら)します。この弛みが顕われると、美食に趨(はし)ったり大食傾向に傾いていき、益々悪循環となります。

骨盤・肩胛骨・頭蓋骨の関節は一日のうち、一定のサイクルをもって、開閉作用を行っている。それは食事をした時に弛(ゆる)み、睡眠中に締まっていき、朝目覚めた時には、しっかりと締まっているのが「骨盤」である。
 しかし、朝の排泄タイムに食事を摂ると、再び骨盤が弛み、「腰痛」は、こうした食事時間の誤りから起るのである。昔から、林業や、その他の肉体労働に従事する人達は、朝食には食事を摂らず、お茶等で排泄タイムに排便をし、骨盤の関節をしっかり締めて、躰
(からだ)を動かす事が、腰痛防止策だった。

 更に、これにストレスが加わると、不規則や不摂生から、暴飲暴食となり、正食は益々狂わされていきます。動蛋白食品や濃い味食品の摂取が多くなり、血液が酸毒化され汚染されてドロドロ状態となります。

 関節の弛みから生じる現象としては、顔に老人斑(ろうじんはん)がら顕われる。シミができる。唇の荒れ。頭髪の脱け毛や毛が細くなる現象。白髪。異常発汗。体臭や口臭がきつくなる。目の筋肉の弛みで起る視力低下。顔全体の筋肉のたるみと膨張。神経痛などが顕われます。

 では、関節の弛みを改善するには、どうしたらよいのでしょうか。
 まず、一日2食で朝食抜きを徹底し、骨の関節の開閉作用を知るべきです。骨は食事をすると弛み、睡眠中に締まるという作用を行っています。

 腰痛を起して居る人は、その多くが多喰いで夜遅く食事をする人に多いようです。大食漢の人は、往々にして腰痛持ちであり、骨盤の関節が開きっぱなしになっています。また美食家に多いようです。
 特に動蛋白摂取を遣(や)り、ケーキやアイスクリーム、菓子類や清涼飲料水、果物などの甘い物を多く摂る人は、腰痛持ちが多く、こうした美食家は魚肉・鶏肉や鶏卵・獣肉が好物で、得てして色情・好色に趨(はし)りやすく、男子の場合は射精多発で骨盤を弛ませ、女子の場合も愛液多量状態にあって骨盤を弛ませます。こうした事から、美食家は、また好色家でもあるのです。

 これは穀物菜食者と、美食等を好む肉常食者の、壮年が排泄する精液の違いにも現れます。穀物菜食の正食をして居る人は、精液の量は多く濃いもので、歳を重ねても中々減量しません。一方、美食家や肉常食者は、精液の量が少なく、薄く、一定年数は元気の良い物のように思われ、回数も、量も多いように感じますが、歳をとると減退し、勃起不能の状態が現れます。

 こういう減退傾向になる原因は、肉常食者の壮年層が、毎日カリ塩の多い、塩気の少ない酒肉を常食としている為で、最初は動蛋白の影響で発情も盛んなのですが、動蛋白摂取過剰は、血液を汚染させる為、後には徐々に衰え、ついに勃起不能状態が起るのです。

 こうした壮年層は、男女を問わず、有期的な発情状態にあり、毎日が発情状態になって、自制心を失わせます。ナトロン塩を多く摂取して居る人は、発情心が盛んで、年から年中発情し、ほぼ一生の間、こうした状態は変わりありません。仮に、勃起不能になっても、心だけは発情した状態にあり、これは好色・色情面に影響を与え続けるのです。

 精力減退改善についてはdaitouryu.net【理趣経的密教房中術】を参照下さい。

 しかし、身体はナトロン塩ばかりで支配されている為、常に発情し、性交の仕方は急激で、少年期後半から壮年期にかけては非常に回数が多く、晩年期になるに従い、減退を始めます。そして一旦弱くなると、挑まれても、空元気で終ってしまいます。更に悪い事は、こうした回数を繰り返す毎に、確実に骨盤が弛んでいっているということです。

 腰骨が弛むと、肩胛骨の関節が弛み、更には頭蓋骨が弛むと云った、同時に三箇所の弛みが現れます。飽食に時代、至る処で、いつもでどこでも、24四時間食事ができると言う状態は、一方に於いて、人間の道徳心を失しなわさせ、質素倹約を忘れて贅沢に趨らせ、時勢の盛衰、人心の優劣を食事によって決定してしまう恐れがあります。

 これにより、人は見た目に騙されます。何が正しく、何が間違っているか、その判断能力が失われます。一旦こうした判断能力が失われると、食の指向も美食に趨り、見た目が美しく「華麗」で、口には「珍味を」という、知らず知らずのうちに、カリ塩を少なく摂り、ナトロン塩を多く摂る劣等人種へと傾いていきます。
 昨今の世情不安と、どこか、何かが間違っているのではという不信は、もとは食事の誤りから派生しているのです。